墨娯游帖
書ノ作品

顔真卿 王羲之を超えた名筆 東京国立博物館を鑑賞して その二

東京国立博物館「顔真卿 王羲之を超えた名筆」、会期は来週の2月24日までとなってゐます。

書道に関わる方々には、ぜひとも一度は足を運んで戴きたい、とてもクオリティの高い書道史展です。

書聖といわれる書家

王羲之(おうぎし)

東晋の政治家であり、書家。

篆書体、隷書体、楷書体と文字が制定され、書法が生まれていく中で、実技的な書法のみならず、書に芸術性を見いだしていく貢献をしていったのが、王羲之といえます。

流麗な書法を表現した王羲之の書は、唐の第二皇帝である、太宗を虜にし、当時現存した王羲之の書をあらゆる手を尽くして収集した太宗は、時の能書家に臨本をつくらせました。

そして、王羲之の行書の最高作品と名高い、蘭亭序(らんていじょ)の原書を、自分の埋葬に際して副葬させてしまいました。

その後、長い戦乱の世が続き、王羲之の原書は、すべて消失したといわれてゐます。

よって、現在、書聖といわれた王羲之の肉筆を観ることは出来ません。

世に出てゐる、王羲之の書といわれるものは、すべて臨本です。

唐の時代の三大能書家といわれる、欧陽詢(おうようじゅん)、虞世南(ぐせいなん)、褚遂良(ちょすいりょう)の手によるものが、代表的な臨本となってゐます。

今回の展覧会の目玉となってゐる、顔真卿「祭姪文稿」(さいてつぶんこう)。

中国書道史の中に於いて、最高峰と名高い王羲之「蘭亭序」がこの世に現存してゐたのが296年間とされるのに対して、古代中国の内乱の歴史で有名な安史の乱により書かれ、1400年程の時を経て、原本書が現存してゐる「祭姪文稿」。

書法に於いても、当時の流行とされた王羲之の書法とは一線を画した、新しい筆法をあみ出し、中国の書道史の代表的書家である、顔真卿の手によって書かれた「激情の書」であることが、日本国内外からも大きな注目となってゐる所以です。

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